「テンパリング」に「温度計不要」というキーワードを目にした時、真っ先に思い出したのは、ちょっと昔に流行し、アニメや実写ドラマ化もされた「美味しんぼ」というグルメ漫画でした。ちょっと昔……ではなく、けっこう昔だったかもしれません。始まった当初は、父と息子の確執を描きながらも、主人公のサラリーマンが食を武器に人々の悩みやピンチを救ってあげる、というストーリーが主体の作品でした。
私の食に関するちょっと変わった知識は、だいたい、この漫画から得たと言っても過言ではありません。
その中に、「天ぷら」を扱った回がありまして、それが凄すぎて忘れられず、こうして今も思い出してしまったぐらいなのですが……。
簡単に言ってしまうと、プロの天ぷら職人は、油のはじける音の変化だけで天ぷらの上がり具合が分かる、というものでした。
そういう訳で、「テンパリング」に「温度計不要」なんて、そんな職人みたいなことが?と、勝手に驚いてしまったわけです。
「テンパリング」を始めるにあたって、まずはチョコレートを刻むところからですが、ここでは、もちろん温度計は使用しません。
その後の、チョコレートを溶かす、という工程に、温度管理が必要になってきます。ここで温度計を使わないとは。触った手の感覚でやるとかでしょうか。それは余りにプロすぎます。
温度計を使わず、簡単にテンパリングをするために、文明の利器を使います。今やどんな家庭にも1台はあるはずの、電子レンジです。スチーム機能付きの1台十万円前後するような高級タイプである必要はありません。一般的な電子レンジです。
チョコレートの種類によって適温が違ってきますが、ミルクチョコレートを例にしてお話をしていきます。
チョコレートを刻んだら、3分の1ほどを残して、それ以外を耐熱容器に入れ、電子レンジへ。まず、おおむね40~45℃に温度を上げ、ゆっくりと溶かしていきます。
やり方なのですが、電子レンジを500Wでセットして加熱していきます。板チョコ50グラムで1分20秒ほどです。一気に過熱するのではなく、10秒毎にレンジを空けてヘラで押しつぶすように混ぜていきます。
溶かしたチョコレートに、先ほど残しておいたチョコレートを混ぜます。これによって温度が下がるのですが、どこまで下げるかというと……
「艶が出て、ドロッと重たく感じるまで」
再び電子レンジで加熱して、31~32℃に上げていきます。この工程が難しく、温度が高くなりすぎて失敗することも。この時の確認の仕方も、やはり……
「ヘラですくってみてタラタラと絶え間なく落ちるまで」
温度が上がりすぎるとサラサラになってしまい失敗。はじめからやり直しです。
やはり感覚が頼りのようです。手の感覚、目で見た様子で判断をするあたりなんか、職人ふうでカッコいいです。
温度計を使うのが、確かに間違いがないかもしれませんが、このやり方を覚えてしまえば、むしろ楽ちんかもしれませんね。
コメントを残す